添乗員は資格なしで働けるのか
旅行業法では、旅行会社のツアーで旅程管理を担う添乗員は原則として、指定の機関における研修と一定期間の実務経験を完了しなければ従事できないとしています。つまり、この2つの要件を満たす旅程管理主任者の資格の取得が実質的に必須とされています。ただし、主任以外の補助的な立場である場合は、添乗員は資格を持たない状態でも添乗業務に関わることが可能です。
(※2026年6月時点 観光庁 旅行業法概要)
添乗員資格の保有者が同行するツアーの添乗は可能
旅程管理主任者の資格を持つ人が主任として同行するツアーであれば、無資格者でも補助添乗員(サブ添乗員)として添乗業務に関わることができます。旅行業法で資格保有が義務付けられているのは主任添乗員のみであり、サブ添乗員に対しては資格要件が設けられていません。
添乗員資格なしで単独の添乗は不可能
無資格者が1人で添乗業務を行うことは、旅行業法において禁止されています。2005年4月の旅行業法改正により、募集型・受注型のいずれにおいても、主任添乗員には旅程管理主任者資格の保有が義務付けられました。
(※2026年6月時点 一般社団法人日本旅行業協会(JATA) 平成16年度観光の状況に関する年次報告)
ガイドの資格があっても単独の添乗は不可能
通訳案内士などのガイド資格を持っていても、旅程管理主任者の資格がない場合は単独で添乗業務を行うことはできません。ガイド資格と旅程管理主任者資格は、仕事内容も根拠法令も異なる別個の資格です。法律上明確に区別されている資格であるため、適用される職業も異なります。
添乗員の資格|旅程管理主任者の種類
国内旅程管理主任者
国内旅程管理主任者は、日本国内のツアー添乗業務に特化した公的資格です。この資格を取得するには、観光庁長官の登録を受けた研修機関が実施する国内旅程管理研修を修了する必要があります。
講座では、旅行業法や約款、国内交通・宿泊施設の利用方法、緊急対応など、国内ツアーの安全性を確保しつつ円滑に進行させるための基礎知識を学習します。修了試験では各科目60点以上の成績が合格基準です。加えて、所定の添乗実務経験を実施することで、国内旅程管理主任者の資格取得が実現します。海外ツアーへの添乗を希望する場合は、別途「総合旅程管理主任者」の資格取得が必要です。
(※2026年6月時点 一般社団法人全国旅行業協 旅程管理研修とは)
総合旅程管理主任者
総合旅程管理主任者は、国内ツアーに加えて海外ツアーの添乗業務にも対応できる資格です。この資格を取得するには、観光庁長官の登録を受けた研修機関が実施する総合旅程管理研修の修了が要件となります。
講座では、出入国手続きや海外の交通・宿泊事情、現地での緊急時対応、異文化理解、英語を含む語学など、外国においてのツアーを運営する上で必要な知識が扱われます。国内旅程管理主任者をすでに保有している場合は、追加の海外添乗実務のみの受講で取得できる科目免除制度が設けられています。また、添乗実務についても、国内とは異なり、海外ツアーへの参加が必要になります。
語学力については試験要件として明記されていないものの、実務を行ううえで一定レベル以上が必要とされています。
添乗員の資格を取得する2つのルート
派遣会社・旅行会社の研修を利用する
一般的とされるのは、派遣会社・旅行会社の研修を利用するルートです。受講希望者は添乗員派遣会社や旅行会社へ登録・入社した後、所属企業の指定する研修機関を利用して資格取得を目指します。旅行業界に馴染みのない一般の方の場合、研修受講前に基礎研修の修了が必要になることもあります。
このルートのメリットは、資格取得後にそのまま所属企業から添乗業務の斡旋を受けられる点にあります。また、働きながら段階的に研修を進められるため、未経験者でも実務に即した知識を得やすい仕組みになっています。なお、所属する派遣会社によっては18歳以上などの年齢制限が設けられている場合もあります。
旅行系の専門学校や大学で取得する
学生のうちに資格を取得し、卒業と同時に即戦力として働きたい方には、旅行系の専門学校や大学で取得するルートがおすすめです。観光関連の専門学校や大学では、インターンシッププログラムなどを通じて、在学中に旅程管理主任者資格の取得が可能です。
学校で取得する利点は、資格を保有した状態で旅行会社への就職や派遣登録ができる点にあります。取得した資格は、履歴書に記載できる実績になるため、観光関連企業の面接で強みとしてアピールできます。また、専門学校では旅行業務取扱管理者試験対策や語学教育などもカリキュラムに組み込まれている場合が多いため、添乗業務に必要な周辺知識も同時に学べます。
なお、専門学校は2年で卒業できるため、現場で早期に活躍を目指したい方にも適しています。
添乗員の資格を取得する研修の流れ
基礎添乗業務研修
基礎添乗業務研修は、旅行業界に従事したことのない未経験者が最初に受ける事前研修です。
研修内容は、旅行業法や約款など、添乗業務に必要な基礎知識を中心に構成されており、理解度の確認のためにテストが実施されることがあります。旅行業者にすでに勤務している方や、旅行業務取扱管理者試験の合格者については、この基礎研修が免除されます。
なお、通訳案内士法に基づく全国通訳案内士または地域通訳案内士の資格を有する方も、基礎研修免除の対象です。未経験から添乗員を目指す方は、所属予定の派遣会社などを通じて、この研修の受講方法を確認するとよいでしょう。
旅程管理者研修
旅程管理者研修は、旅程管理主任者資格を取得するための中核となる研修プログラムです。観光庁長官の登録を受けた研修機関が実施しており、国内コースと総合コースの2つが用意されています。研修では、旅程管理業務の理解と、ツアーの開催に必要な各種サービスの手続き方法等について、より現場の実務に踏み込んだ講義が行われます。
研修の最終日には修了試験が実施され、各科目60点以上の成績を取ることが合格基準として定められています。基準に達しない科目が1つでもある場合は未修了となり、受講者は次のステップに進めません。なお、研修は連続日での受講が必須となっており、遅刻や途中退席は未修了の扱いとなります。
添乗実務
添乗実務は、旅程管理者研修の修了に加えて、旅程管理主任者資格を取得するために必要な実務経験です。実務経験は、研修修了日の前後1年以内に1回以上、または研修修了日から3年以内に2回以上実施したものが認められます。実務として認められるのは以下の3タイプです。
- 登録機関の主催する研修ツアーに添乗する
- 旅程管理主任者によって指揮されたツアーに補助として添乗する
- 旅行者に依頼された手配旅行に添乗する
国内資格の場合は国内のバスツアーへの参加、総合資格の場合は海外ツアーへの同行が一般的な実務体験の方法となっています。研修機関や派遣会社では、実務経験の機会となるバスツアー研修や海外実地研修を提供しており、受講者はこれを利用して経験を積むことができます。
実務経験を終えた後、旅程管理主任者証の発行を受けることで、受講者はようやく主任添乗員として活動できます。
(※2026年6月時点 一般社団法人全国旅行業協 旅程管理研修とは)
添乗員資格を取得する前に知っておきたい注意点
会社への所属が必須なので個人で取得はできない
旅程管理主任者資格は、個人単位での申し込みや取得ができません。研修の受講要件として、旅行業者または添乗員派遣会社への所属、もしくは所属予定であることが求められるためです。未経験者の場合は、まず添乗員派遣会社などへの登録を行い、面接や採用プロセスを経たうえで研修の受講が可能となります。
また、旅程管理主任者証は所属している企業から発行されるため、転職や登録先の変更に際して返還が義務付けられています。
実務経験は期限内に積まないと無効になる
実務経験は、旅程管理者研修の修了日から一定の期限内に積まなければ無効となる可能性があります。具体的には、研修修了日の前後1年以内に1回以上、または研修修了日から3年以内に2回以上の実務経験が必要です。この期限を過ぎた場合、研修修了証明書は実質的に効力を失うため、改めて研修を受け直す必要があります。
期間に余裕はありますが、総合旅程管理主任者の場合は海外ツアーへの同行が要件になるため、パスポートの準備などは早めに整える必要があります。
欠格事項に該当すると取得できない
旅程管理主任者の資格は、旅行業法に定められた欠格事項に該当する場合、取得することができません。具体的な欠格事項としては、以下が挙げられます。
- 旅行業等の登録を取り消されてから5年を経過していない者
- 禁錮以上の刑、または旅行業法違反による罰金刑の執行を終えてから5年を経過していない者
- 暴力団員等に該当する者
- 成人の能力を持たない者
- 申請の5年以内に旅行業務関連で不正行為を働いた者
- 心身の故障により旅行業等を適正に遂行できない者、または破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
これらの欠格事項は、旅行業法第6条第1項に基づくものであり、旅行業従事者として求められる最低限の適格性を表しています。
(※2026年6月時点 観光庁 欠格事項に該当しない旨の宣誓書)
添乗員に関連性の高い資格
通訳案内士
通訳案内士は、報酬を得て外国人観光客に対し外国語で観光案内を行うことができる国家資格です。
旅程管理主任者とは仕事内容が異なり、通訳案内士は主に観光地での文化・歴史の解説を担当します。通訳案内士の資格を持っていても、単独で添乗業務を行うことはできないため、添乗員としてツアーを率いるには旅程管理主任者の資格取得が必要になります。
なお、通訳案内士の資格保有者は、旅程管理主任者研修の受講要件を満たすものとして認められているため、会社に所属していない場合でも研修を受講できます。ただし、資格を取得したとしても主任者証の発行は所属会社のみしかできないため、主任添乗員として働くには派遣会社への登録が必要です。
通訳案内士の資格は語学力の客観的な証明となるため、海外ツアーの添乗員を目指す場合はキャリアアップの大きな支えとなります。両資格を取得することで、観光ガイドと旅程管理の両面に対応できる添乗員を目指せるため活躍の場が広がります。
(※2026年6月時点 観光庁 全国通訳案内士とは)
(※2026年6月時点 一般社団法人全国旅行業協 旅程管理研修とは)
旅行業務取扱管理者
旅行業務取扱管理者は、旅行業者または旅行業者代理業者の営業所に責任者として従事することが可能になる国家資格です。旅行業法では、営業所ごとに1人以上の旅行業務取扱管理者を選任することが義務付けられています。資格は、取り扱う旅行の範囲に応じて「総合」「国内」「地域限定」の3種類に区分されています。
旅行業務取扱管理者の主な業務は、旅行計画の作成、取引条件の説明、約款の掲示、旅程管理業務を行う主任者を通じた管理・監督などが該当します。旅程管理主任者が現場で旅程管理を担うのに対し、旅行業務取扱管理者はオフィスでの管理・監督を担います。なお、旅行業務取扱管理者の資格のみでは添乗業務を行うことはできません。
(※2026年6月時点 観光庁 旅行業務取扱管理者)
(※2026年6月時点 観光庁 旅行業法概要)
観光英語検定
観光英語検定は、旅行・観光分野で必要となる英語運用能力を評価する民間検定試験です。
観光英語検定は、国際人としての英語力を身につけることを目的とし、観光における英語コミュニケーション能力を測ることができます。試験では、空港や各交通機関、訪問施設などの実際の場面を想定した問題が出題され、観光に必須の文化や地理、歴史の知識も問われます。
1級から3級までのレベルが設定されており、TOEICや英検とは異なり、観光業界に特化した専門用語や実践的な表現が学べる点が特徴です。添乗員にとっては、海外添乗時の英語対応や、訪日外国人観光客への案内において、業務に直結する語学スキルを習得できる検定となります。
観光英語検定は添乗業務を行うために必須の資格ではないものの、海外添乗やインバウンド対応を視野に入れる場合の補完的な資格として適切です。
(※2026年6月時点 全国語学ビジネス観光教育協会 観光英語検定について)
TOEIC
TOEICは、英語によるコミュニケーション能力を総合的に評価する国際的な試験です。添乗員に必須の資格ではないものの、海外添乗を担当する場合の英語力の客観的な指標として役立ちます。ツアーコンダクターとして海外添乗を行う場合の英語力の目安として、最低でもTOEIC600点以上が望ましいとされています。
TOEICは英語コミュニケーション能力を総合的に評価できる試験であるため、そのスコアが旅行会社の採用場面でも高く評価される傾向があります。国内ツアーであっても、近年は訪日外国人観光客への対応が必要となる場面が増えています。そのため、TOEICで一定スコアを保有していることは、添乗員としてのキャリア形成においてメリットになります。
海外ツアーを中心に担当する添乗員は、観光英語検定と組み合わせて学習することで、より実務に即した英語力を身につけられます。
添乗員の資格に関するよくある質問
添乗員になるには資格は必要?
旅行会社が企画する募集型・受注型企画旅行に主任として添乗する場合は、旅程管理主任者資格が必要となります。これは旅行業法第12条の11によって定められた制度です。補助添乗員(サブ添乗員)であれば、無資格者でも添乗業務に関わることができます。
(※2026年6月時点 観光庁 旅行業法概要)
添乗員の資格を取るのは難しい?
旅程管理主任者資格は、観光庁長官の登録を受けた研修機関による研修と実務経験により取得する公的資格です。修了試験は各科目60点以上の成績が合格基準として設けられています。未経験者でも所属する派遣会社や研修機関のサポートを受けて計画的に進めることで、取得を目指せる資格となっています。
(※2026年6月時点 一般社団法人全国旅行業協 旅程管理研修とは)
添乗員資格の取得にかかる費用は?
旅程管理主任者資格の取得費用は、研修機関や受講する資格の種類(国内・総合)によって異なります。例として、日本添乗サービス協会の料金は、国内資格で27,500円(※1)、総合資格で36,700円(※2)の受講料になっています。
(※1~2 2026年6月時点 一般社団法人日本添乗サービス協会 旅程管理研修)
また、上記は講座研修と実地研修の費用で構成されていますが、機関によっては工程ごとに料金が設定されている場合もあります。
添乗員は副業や未経験でも始められる?
添乗員は、未経験から始められる職業として広く知られています。未経験者の登録を受け入れている派遣会社は多く存在しているため、登録後に研修を受講して資格取得を目指す流れが一般的です。複数の添乗員がいるツアーであれば主任以外は無資格でも参加可能なため、未経験者でも経験を積みながら働くことができます。